地方小規模大学が生き残るための学部・学科設置事情とは
皆様、本コラムをご覧いただきありがとうございます。
今回は、近年の大学による学部・学科設置のトレンド及び必要性についてお伝えさせていただきます。
コラムのタイトルにある小規模大学ですが近年は厳しい傾向が続いております。
複数学部を備え、多くの学生を抱える大規模大学と比較して小規模大学は募集倍率が低い傾向があり、特に入学定員100名を下回る学校においてはその傾向が顕著です。
また、2020年までの傾向で言えば高校生の都心志向も目立ちました。
この結果、地方の小規模大学と都心の大規模大学では学生募集の状況に大きな開きが生じました。
しかし、この背景にあるのは18歳人口減少や高校生の都心志向の高まりだけではないと考えております。平成29年度から令和3年度にかけて認可・届出を含めて531件の学科が新設されました。その設置トレンドとしては、「看護」「国際」「経営」「心理」などが目立ったものです。そして、これらの学科の志願者数は平成25年から平成30年にかけて1.3~1.5倍増加しております。事実、新設された学部・学科の多くが埼玉・東京・神奈川・千葉・愛知・京都・大阪・兵庫という都心にある大学によるものでした。
つまり、以前から都心に所在し高校生の都心志向に合っていた大学が更に高校生の志向に合った商品(学部学科)を用意しているという現状です。このことから、地方の小規模大学が生き残るために「商品(学部・学科)の見直し」は1つ重要なポイントであると感じていただけますでしょうか。
規模が小さい大学や設置経験が少ない、前回の設置から期間が空いている大学関係者の皆様は、新学部・学科を作ると考えた際に「投資」や「組織」など抱える課題は複数あるかと存じます。そのうちの1つである「設置申請」の近年の傾向について簡単にお伝えさせていただきます。
近年の新学部・学科設置において「申請」のハードルが上昇しているのも事実でございます。平成31年度には申請学科件数78件に対して警告が付された件数は3件でした。一方、令和2年度には申請学科件数70件に対して警告が付された件数は21件と申請ハードルが上がっております。これは学部・学科が設置できなくなったということではなく、「学部・学科を設置する上で社会的に必要であるか、教育研究を行う上で十分な環境が整えられているか」といったその学部・学科が中長期的に運営・経営する上で問題がないかを設置のタイミングでしっかりと見られるようになったことを意味します。
このように、新学部・学科を設置すると考える上で事前に申請のポイントや今後の高校生の志向の変化によって求められてくる商品(学部・学科)、申請を乗り越える上で必要になってくる組織のポイントについて把握することは非常に重要になってきます。