【短期大学・専門学校向け】 大学化・専門職大学化、可否判断のポイントの解説
皆様、いつも本コラムをご覧いただき、誠にありがとうございます。
今回のコラムでは、高等教育機関を取り巻く環境を基に、大学化・専門職大学化の必要性、プラス・マイナス要因および設置上の留意事項お伝えさせていただきます。
すでにお気づきの方はいらっしゃると思いますが、近年、大学化または専門職大学化した短期大学・専門学校様が増加しています。また、新型コロナウイルス感染症により、コロナ禍の出口戦略として大学化をご検討の学校法人様も少なくなく、新たに業界が大きく動きつつあります。
・なぜ大学化・専門職大学化が必要だろうか
・大学化・専門職大学化のメリットとデメリットはなにか
・大学化・専門職大学化を検討する際に、何を考えなければならないのか・・・
などについて今回のコラムでご解説致します。
(1)なぜ大学化・専門職大学化が必要だろうか
ご存知の通り、現在我が国の18歳人口は減少しており、2020年18歳人口は116.7万人であり、2040年後約88万人までに減少すると予測されており、高等教育機関を取り巻く状況は年々厳しくなることが見込まれます(文部科学省)。
そして、18歳人口の減少による学生募集が厳しくなっているなか、高等教育機関別に大きな違いが存在しています。下記は「大学」、「短期大学」、「専門学校」における志願者数・志願倍率の推移を示すものです。
四年制大学の志願者数・志願倍率は一貫して増加傾向にあります(図1)。一方、短期大学への志願者数の減少が続いており、志願倍率も1.3前後にとどまっています。また、専門学校への志願者数は大きく変わっていませんが、志願倍率は1.0を切っており、市場環境は最も厳しいといえます。
以上のデータが示すように、短期大学・専門学校は大学と比較して、市場環境が厳しく、学生募集に苦戦していることがわかります。そういった状況を打破し、募集力を向上するために、四年制大学の市場に参入することは有効な施策と考えられます。
「市場そのものを変える」ということが法人を永続、発展させるために最も効果的な手段であるであるため、資金力のある短期大学・専門学校は「大学化・専門職大学化」の検討が必要でしょう。
図1.大学における志願者数・志願倍率の推移
図2.短期大学における志願者数・志願倍率の推移
図3.専門学校における志願者数・志願倍率の推移
(2)大学化・専門職大学化のメリットとデメリットはなにか
①大学化に伴うメリット
大学化には様々なメリットがあります。上述のように、「募集力の向上」「市場マーケットの拡大」が最も高いメリットになります。更に、「社会的地域の向上」、「学費水準・学力の向上」等も大学化におけるプラス要因として考えられ、総じて学校の永続性に対してはプラスの効果が期待できます。余談となりますが、高校の進路指導の先生にとって、大学進学率の目標・ノルマがあるため、大学となった場合は高校に対する広報活動は一気に展開しやすくなります。
②大学化に伴うデメリット
大学化に伴うデメリットもあります。最も懸念されるデメリットは教員人件費・各種管理経費の向上による収益率の減少です(専門学校のみ)。定員充足がなされている場合、専門学校の方が収益率は高いため、「募集力の向上」といった最大のメリットの必要ない場合、専門学校として維持する方が法人経営にとってプラスとなります。他にも「多額の投資金が必要」「認可申請に係る事務手続きが必要」等はマイナス要因として考えられていますが、一過性のものと考えられます。
(3)大学化・専門職大学化を検討する際に、何を考えなければならないのか・・・
大学化の可否判断(大学化できるのか?できないのか?)についてですが、厳密には様々な法令上の基準があり、内容が煩雑となりますが、今回は「ザックリの指標」として下記の3点をご紹介します。弊社の経験上、下記の3点を満たす法人はほぼ、大学化が可能といえます。
基準① 必要投資額を負債性のない自己資金として保有しているか
大学化する場合、法令上、かけなければならない投資額が決まっています(標準設置経費)。こちらの経費は学部の種類や定員によって上下し、小規模であればあるほど金額は減少しますが、概ね、5~10億円程度と考えてください。この金額を現預金で保有しているかどうか?が認可の最も重要なハードルとなります。
「5~10億円の現預金なんかない!」と思われた法人様が多いかと思いますが、この金額は既存の校舎の帳簿価格(既存建物の価格)によって減算することが可能となります。
例えば、必要投資額が5億円であり、既存校舎の帳簿価格(建物の価値)が3億円であれば、2億円の現預金保有があれば、大学化は可能です。
大学化の事例によれば、数千万円の投資で大学化に成功した事例もありますため、ご興味のある法人様は既存建物の価値を、まずご確認をいただければ幸いです。
基準② 借入がないか
第二の判断基準としては「借入がないか」といった視点です。上記①にて既存建物の価格が重要とお伝えしましたが、借入によって建てた場合は自己保有でないため、認可上大
きな制限がかかります。また、負債償還率等、様々な基準が追加で発生するため、「借入なし」であれば認可にとって非常に大きなプラス材料となります。
※借入があれば、大学化できないわけではないため、もしご検討の法人様がいればご連絡頂ければ弊社にて判定致します。
基準③ 校地・校舎などは自己保有しているか
第三の判断基準としては「校地・校舎が自己保有かどうか」です。専門学校の設置基準にも適用されるかと思いますが、学校の場合はその永続性を担保するため、自己保有が原則となります。
(4)おわりに
今回は大学化・専門職大学化の必要性、メリット・デメリット、可否判断の3大ポイントを中心に解説しました。しかし、前述の通り、大学化の可否判断は法人様の状況によって個別に判断しなければならないものです。
また、投資額は既存校舎の状況、移行計画等により大きく異なっていますので、ご不明点等ございましたら弊社までご連絡いただければ、簡易的な診断を実施することが可能です。
弊社は、
(1) 貴学の現状把握ととりまく環境の調査(内部分析・外部分析)
(2) 分析結果から大学化・専門職大学化の可否を判断
(3) ハンズオンで認可(届出)の事務手続きのサポート
という3ステップで大学化設置判断から認可まで一貫してご支援を行っております。
ご検討いただいている学校法人様は下記お問合せフォームより無料経営相談にお申込みくださいませ。