大学職員SDの重要性と効果的な推進方法について

2025.10.29

皆様、いつも本コラムをご覧いただきありがとうございます。

秋も深まり、朝晩の冷え込みを感じる季節となりました。大学においては、来年度の学生募集に向けた準備が本格化し、戦略的な意思決定が求められる時期かと存じます。このような環境下で、大学経営の持続性を高めるために不可欠な要素が、職員の能力開発(SD)です。

今回のコラムでは、「大学職員SDの重要性と効果的な推進方法について」と題しまして、
(1)大学職員SDの必要性が高まる背景
(2)効果的なSDの前提となる考え方
(3)パターン別のSD事例
について解説させていただきます。

(1)大学職員SDの必要性が高まる背景

まず、大学職員のSD(Staff
Development)の必要性が近年急速に高まっている背景について解説します。これは主に、「少子化の進行」「ガバナンス改革の要請」「デジタル変革(DX)の加速」という3つの大きな外部要因に起因しています。

① 厳しさを増す外部環境への対応

18歳人口の減少に伴い、大学間の競争が激化しています。生き残りをかけた競争の中で、職員は事務手続きの担当者から、経営戦略を理解し、企画・実行できる「戦略的参謀」へと役割を変化させることが求められています。

入試戦略の高度化: データに基づいた分析力と、学生に選ばれるための新たな教育プログラム企画力が必要。

財政基盤の多様化: 補助金頼みから脱却し、寄付金や社会人教育など、新たな収益源を確保する能力が求められる。

② ガバナンス・教学改革の要請

大学の社会的な責任が増す中、迅速かつ適切な意思決定を行うためのガバナンス(統治体制)の強化が不可欠です。

大学執行部を支え、適切な経営判断を下すための客観的なデータ提供やリスク管理の能力が職員に求められています。

教学マネジメント改革の推進役として、教育の質保証やカリキュラム設計における教員との連携強化も重要な役割です。

③ デジタル変革(DX)への対応

教育、研究、事務のあらゆる側面でDXが進行しています。これにより、職員は従来の紙ベースの業務から脱却し、新しいツールを使いこなす能力が不可欠となっています。

業務効率化: RPAやクラウドツールを導入し、定型業務を自動化することで、戦略業務に人的資源をシフトさせる必要があります。

データ駆動型経営: 学生の学習データや経営データを収集・分析し、意思決定に活用するデータリテラシーが必須となります。

これらの背景から、職員一人ひとりの能力を引き上げることが、大学全体の持続的な成長に直結する状況にあると言えます。

(2)効果的なSDの前提となる考え方
“大学職員のSDに対する基本的な考え方についてですが、最も重要なのは「単なる義務的な研修の消化」ではなく、「教育研究機能の強化と大学経営への貢献」をゴールに設定することです。

今日の大学職員に求められる資質は、単に事務を処理する能力だけでなく、外部環境の変化を理解し、戦略的な提案を行う「プロフェッショナルな経営参画能力」へとシフトしています。

このため、SDを推進する上で前提とすべきは、以下の視点です。

コンプライアンス達成から付加価値創造へ

研修の受講率を目標とするのではなく、受講後に業務改善や新規事業提案に繋がったかを評価する。

専門性と汎用性の両立

部署特有の専門知識(例:入試制度、学事規則)に加え、全職員が共通して持つべき汎用的なスキル(例:財務知識、データ分析、コミュニケーション)を習得する機会を提供する。

経営戦略との連動

SDプログラムが、中期計画やグランドデザインで示された大学の目指す姿(ビジョン)と具体的に結びついていることを明確にする。

すなわち、SDによって目指すべきは、職員全員が経営課題を自分事として捉え、自律的に行動できる組織体質の構築であり、この点が形式的な研修実施との最も大きな違いとなります。”
(3)パターン別のSD事例
“近年の大学におけるSDは、職務階層や求めるスキルに応じて、主に以下の2つのパターンに分類されます。

① 経営層・管理職向けSD(戦略的視点の獲得)

大学の舵取りを担う層に対しては、外部環境の変化に対応し、非連続的な成長を実現するための「戦略的な視点」の習得に重点が置かれます。

外部講師による経営戦略研修

大学経営のトレンドや他産業の成功事例を学び、自学の強み・弱みを客観的に分析するワークショップ形式の研修。

財務・会計に関する専門研修

単年度予算管理に留まらず、中長期的な施設投資計画や資金運用に関する知識を深め、経営判断に必要なリテラシーを強化。

② 実務職員向けSD(業務効率化と専門能力の深化)

現場の最前線で業務を担う職員に対しては、業務効率の向上と学生・社会への対応力強化に直結するスキルの習得が中心となります。

DX・データ活用スキル研修

学生データ(成績、履修傾向、アンケート)を活用した中退防止策や、RPA/AIツールを用いた事務作業の自動化を目的とした実践的なトレーニング。

対人スキル・危機管理研修

ハラスメント防止のための正しい知識や、多様な学生への対応力(ダイバーシティ&インクルージョン)、保護者や地域からの問い合わせへの適切な対応力を高めるシミュレーション研修。


まとめ
“本コラムでは、大学職員SDの重要性と効果的な推進方法について解説してまいりました。

職員SDは、単なる研修ではなく、少子化、ガバナンス強化、DXといった外部環境の変化に対応し、大学の持続的成長を実現するための「経営戦略そのもの」です。

SDを成功させるための鍵は、以下の2点に集約されます。

ゴール設定: 「事務処理能力の向上」ではなく、「教育研究機能の強化と大学経営への貢献」を明確なゴールとすること。

階層別戦略: 経営層には「戦略的視点」を、実務職員には「業務効率化と専門能力」をターゲットとしたプログラムを展開すること。

職員一人ひとりが大学の未来を担うプロフェッショナルへと進化することで、貴学の競争力は確実に向上します。SDの策定、実施や具体的なプログラムの設計にお困りの点がございましたら、ぜひご相談ください。

引き続き、本コラムをよろしくお願いいたします。”

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