ICT導入による教育の未来予想図とは

2020.12.14

先月のコラムでは、GIGAスクール構想の概要についてお伝えし、それによってどのような変化が起こり得るかについて解説いたしました。
GIGAスクール構想は小学校・中学校・特別支援学校におけるICT環境整備のための構想ですが、今後、どの教育機関においてもICTツールの活用は必須となっていきます。

そこで、今月のコラムでは、先月のコラムでお伝えした内容を敷衍して、“教育”というものがICT導入によってどのように変化していくかについて、解説いたします。

そもそも、教育にはどのような要素があるのでしょうか、そして、そのどの要素においてもICT導入は可能なのでしょうか。

 

教育には大きく分けて、「目標設定」・「進捗管理」・「教授」の要素があると認識しております。

 

◆「目標設定」

「目標設定」とは、児童・生徒・学生が、その教育を受け終わった後、どのような姿になっていたいかを決定することです。
これは、教師の側が一方的に決定する場合もあれば、面談などにより話し合いながら決定していく場合もあるでしょう。

また、最終目標を踏まえ、そこに至るまでの小目標を設定することも重要です。どのような課題をクリアしていけば良いのか等を設定することも、「目標設定」の一部です。

 

◆「進捗管理」

「進捗管理」とは、設定した目標を踏まえて、その目標に対しての児童・生徒・学生の進捗具合を把握し、必要に応じて管理することです。
自律心のある児童・生徒・学生に対しては必要のない要素ですが、そのような児童・生徒・学生は少ないので、ほとんどの場合、この「進捗管理」についても教育の一要素として求められることになります。面談や課題の提出が、「進捗管理」のための主な方策です。

 

◆「教授」

「教授」とは、何かを伝えることです。つまり、設定した小目標をクリアするために、児童・生徒・学生に対して、知識や考え方を伝えることです。方法としては、授業や演習等が挙げられます。また、「教授」機能は、目的の違いによって大きく2つに分けることができます。解を与えるための教授と、問を与えるための教授です。前者は答えがひとつに決まるもののことです。受験において必要な学習は、基本的にこちらになります。後者は児童・生徒・学生の興味・関心を高めるもので、答えがひとつに決まらないもののことです。探求学習などはこちらに当てはまります。

 

それでは、以上の3つの要素は、それぞれICT導入によってどのような変化がもたらされるのでしょうか。

まず、「目標設定」の機能です。「目標設定」のための方策のひとつであった面談ですが、チャットツールやビデオ会議ツールを整備することで、時間や場所に囚われずに実施することが可能になります。
また最終目標に至るまでの小目標の設定ですが、これは最終目標の違いや、児童・生徒・学生の学習の進捗状況や特性によって、大きく変化します。つまり、個別性が求められます。

ここで有効と考えられるのがAIを活用した小目標の設定です。

AIが児童・生徒・学生の学習の進捗状況や特性を把握し、最適な進め方を提案することで、それぞれの児童・生徒・学生に合った小目標の設定が可能になります。実際に、既に高校受験や英語学習の領域でAIを活用したサービスがみられるようになってきており、この「目標設定」領域におけるAIの活用はこれから更に進んでいくことになると考えられます。

次に、「進捗管理」の機能です。これまではリアルの場で、面談や課題を通してでしか進捗管理ができませんでした。しかし、ICTツールの活用によって、「進捗管理」も容易かつ綿密に実施することが可能になります。

映像授業やデジタル教材を活用などのICTツールを活用することで、教師はそのICTツールの管理者として、どの児童・生徒・学生が、何をどの程度進めることができているのか、リアルタイムに把握することができるようになります。これによって、「進捗管理」は容易かつ綿密に実施できるようになります。

最後が、「教授」の機能です。この機能が最もICTツールの活用をイメージしやすいのではないでしょうか。

COVID-19を受けた緊急事態宣言の下においても、多くの教育機関がビデオ会議ツールを通して授業を行っていました。ただし、このビデオ会議ツールを使って授業を行う形態がこれからも永続するかといえば、そうではないでしょう。

解を与えるための教授においては、個別性は求められません。つまり、児童・生徒・学生によって教授内容自体を大きく変える必要はありません。そのため、ここにおいては、ビデオ会議ツールを通して授業を行うよりも、質の高い映像授業を配信する方が教育効果は高いでしょう。

既にそのような方法で授業を実施している教育機関もありますが、この流れは更に加速することになると考えられます。

そして、そのような流れの中で、教師の役割は、一斉授業を行うようなティーチングの役割から、児童・生徒・学生ひとりひとりをサポートするコーチングの役割に変化することになると考えられます。つまり、質の高い映像授業で児童・生徒・学生は学び、そこでどうしても理解できないことを教師が個別でサポートする、というような形になっていくことでしょう。

一方で、問を与えるための教授は、児童・生徒・学生ひとりひとりの興味・関心に沿うことが重要であり、個別性が求められることになります。そのため、映像授業のような形での教授はそぐわず、ビデオ会議ツールを活用した方法が主流となると考えられます。

以上のように、教育におけるICT導入といっても、教育のそれぞれの要素で、適切なICTツールの使い方があります。
また、上で示したのはあくまで“教育”それ自体におけるICTの導入についてですが、教師の業務を円滑にするような、経営視点でのICTツール導入ももちろんあります。

そのようなことを踏まえた上で、適切なICTツールを、適切な方法で活用していくことが、児童・生徒・学生に対する教育という観点でも、教育機関の経営や永続性の観点でも、非常に重要になります。

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